相続税の非課税枠

相続税は、すべての財産にかけられるわけではなく、一定の範囲で「非課税枠」というものが決まっています。では、具体的にどのようなものが非課税になるのかを見てみましょう。

 

☆相続税の非課税枠とは?

相続税は、相続全体から見ると1割未満という限られた人に課せられる税金です。これは、相続税の趣旨が「富の再分配」という考え方であるため、相続財産が少ない人にまで税金を課すのは妥当ではないからです。

 

この一定範囲の非課税枠を「基礎控除」と呼んでいます。

 

☆平成27年1月1日より改正された内容

基礎控除は、平成26年より以前は5,000万円+相続人の数×1,000万円に設定されていました。しかし、バブル崩壊後、日本の地価はどんどん下落し、それに伴ってある程度の不動産を持っている人でも相続税の基礎控除の範囲内に収まってしまうことが多くなりました。よって、相続発生件数全体に対して2%から3%程度しか相続税は課税されない状態になっていたのですが、より一層の税収を確保するために平成27年1月1日を境に、基礎控除がそれまでの6割である3,000万円+相続人の数×600万円まで引き下げられたのです。

 

これによって、東京や大阪などの大都市を中心として相続税の課税対象が大幅に増加しました。

 

☆相続人数による非課税枠

相続税は、相続人の数によって税負担が変わってくることが上記の「基礎控除」の設定の仕方を見てもわかることでしょう。基礎控除額が増えるということのみならず、相続人の人数が多いことによって「税率」が下がるということもあります。これは、各相続人の「法定相続分に応じた取得金額」が小さくなるので適用される累進税率の区分が変わることによるものです。

 

また、下記で説明する「みなし相続財産」としての生命保険金や死亡退職金の非課税枠も、相続人の人数が多ければ多いほど増加します。

 

このようなことから、養子縁組をして相続人を増やすというスキームも節税のためにはよく使われます。ただ注意しなくてはならないのが、税法上では法定相続人に含める養子の人数に制限があり、実子がいる場合は1人、実子がいない場合は2人までと定められています。

 

また、養子というのは身分関係に関することですので、むやみに節税を狙って養子縁組をすると親族の間の感情的なもつれが発生する危険があることに注意しなくてはなりません。親族関係が悪くなれば遺産分割協議がまとまらない、ひいては子孫の代にまで関係の悪化が影響したり、税金面を見てもしかるべき税額軽減を受けられなくなったりする事態が考えられますので、よくそのあたりを考慮した上で縁組するべきです。

 

また、相続人の中である属性を持つ人については税額が控除されることがあります。

1つ目は「未成年者控除」です。これは、満20歳未満の相続人(相続放棄した場合も含む。国内財産のみが課税対象となる一定の非居住者は除く)は、10万円×満20歳になるまでの年数(1年未満の端数は切り上げ)で計算した金額を控除できます。

 

2つ目は「障害者控除」です。これは、日本国内に住所を有する障害を持つ相続人(相続放棄した場合も含む。国内財産のみが課税対象となる一定の非居住者は除く)は、通常の障害者であれば10万円×満85歳になるまでの年数なるまでの年数(1年未満の端数は切り上げ)で計算した金額を、特別障害者(特に重度の障害を持つ人)は20万円×満85歳になるまでの年数なるまでの年数(1年未満の端数は切り上げ)で計算した金額を控除することができます。

 

☆みなし相続財産の非課税枠

「みなし相続財産」というのは、民法の上では遺産扱いにならない、つまり遺産分割協議の対象ではないが、税法上は相続財産とみなされる財産です。

 

具体的に言えば、代表的なものが「生命保険の死亡保険金」です。受取人が相続人の誰かに指定された保険金は、被相続人が亡くなった瞬間に相続人の「固有の財産」になりますので遺産分割の対象外です。しかし、被相続人の死亡によって承継された財産と考えることができるので相続税計算の際には財産に算入することになっています。同じようなことから死亡退職金もこのような扱いをされています。

 

みなし相続財産については法定相続人の数×500万円という非課税枠がありますので、これを有効に利用すれば節税もできると同時に納税資金を準備しておくこともできるという点で、非常に使い勝手の良い制度といえます。

 

☆借金があった相続財産の非課税枠

相続財産というのは必ずしもプラスのものだけではありません。借金(負債)も含めて相続財産ですので、「事業をしていた」など事情によっては負債の部分が非常に大きいこともあります。こういった場合にもプラス財産だけ全額に相続税をかけるのは妥当ではないため、プラス財産から負債を差し引いてよいことになっています。

 

☆まとめ

非課税枠を利用することで大幅に税額が軽減でき、場合によってはゼロになることもありますので見落としのないよう、しっかりとチェックしましょう。